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連続生産においてレーザでアルミニウムを耐圧溶接

Feinwerktechnik hago GmbHが製造しているコンポーネントとパーツのうち、95パーセントは自動車業界向けです。同社の製造チームは、長年にわたる経験と確かなノウハウを活用して、非常に複雑な要件にも対応しています。しかしながら、電気自動車のバッテリーマネジメントコントローラー(BMC)にあるパワーエレクトロニクスの熱管理に関して、アルミニウム製冷却ユニットの問い合わせが来た時は、同社のエキスパートであっても、知恵を絞らなければなりませんでした。そして、少し前まではどの専門家も不可能であると考えていたことをやって見せたのです。具体的には、パンチ加工したアルミニウムコンポーネント2つとVDAコネクター2つから成る長さほぼ1メートルの冷却ユニットを、連続生産で高いプロセス安定性を維持しながらレーザ溶接したのです。これを可能にしたのは、BrightLine Weldテクノロジーと、TRUMPFが開発したマルチフォーカス光学系の組み合わせでした。hagoとTRUMPFは共同で集中的に実験とテストを行った結果、上記の方法を使用することで、BMCユニットを冷却して保護するアルミニウムカバーを、気密だけでなく耐圧そしてほぼ平坦に、連続生産で自動レーザ溶接できることを示したのです。

Feinwerktechnik hago GmbH

www.hago-ft.de

Feinwerktechnik hago GmbHは、板金加工のジェネラリストです。ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州キュッサベルクに本拠を置く同社は、1970年の設立以来、幅広いテクノロジー、高い垂直統合度と豊富なノウハウを駆使しながら、様々な業界で高い評判を得てきています。事業の重点は自動車業界に置かれています。有能な人材を抱える開発設計部門を有し、金型を自社製造しているhagoは、設計の最適化、パーツの更なる加工やテストなどでお客様をサポートしています。また、複雑なコンポーネント、手作業で製造したサンプルパーツならびに量産品を、どれもお客様の要望に合わせて供給しています。

業界
自動車・電機・家具業界ならびに医療技術
従業員数
700人以上
事業拠点
キュッサベルク(ドイツ)
TRUMPF製品
  • BrightLine Weldとマルチフォーカス光学系を装備したTruLaser Cell 7040

アプリケーション
  • レーザ溶接

課題

電気自動車の心臓部は、バッテリーとバッテリーマネジメントコントローラー(BMC)です。後者は、充電状態、温度やセル電圧などのパラメーターを制御して、バッテリーの出力、安全性と寿命を監視、制御、最適化します。取り付けられているパワーエレクトロニクスが、バッテリーの直流を駆動システムで必要な交流に変換します。その際に発生する熱が、エレクトロニクスに悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、最新の冷却ユニットが対策として活躍することになります。同ユニットは、気密性の「フタ」としてBMCハウジングに組み込み、車両の冷却回路に接続することができます。ただし、効果的な冷却を確保するには、冷却ユニットがパワーエレクトロニクスと直接接触している必要があります。そのため、冷却ユニットは完全に平坦でなければなりません。また、軽量であり、重量の余計な増加がないことが求められる一方で、自動車メーカーの圧力検査に対する要件を満たすことも必要になります。

「お客様からの問い合わせ内容は、引き抜き加工したアルミニウム製の冷却プレートで、寸法が900 x 200 ミリメートルのものでしたが、これは当社の極めて経験豊富なエキスパートにとっても大きな難題でした」と、Feinwerktechnik hagoのヨーゼフ・ガンプ生産管理部長は語っています。ですが、困難な課題は同社のチームの挑戦心をくすぐることになりました。「TRUMPFと共同で何度も実験とテストを行った結果、プロセス安定性の高い解決策が見つかり、冷却ユニットを連続生産できるようになったのです」とガンプ部長は誇らしく述べています。

お客様からこの問い合わせを受けた時、技術的に製造可能であると思った者は全くいませんでした。

ヨーゼフ・ガンプ
Feinwerktechnik hago生産管理部長

ソリューション

TRUMPFが提供しているBrightLine Weldは、既に何年も前から確かな実績を残しているレーザ溶接法であり、ステンレスを穴なしで素早く気密溶接することができます。2021年にマルチフォーカス光学系が開発されたことで、用途の幅がより一層広くなっており、BrightLine Weldをそれと組み合わせれば、アルミニウムの耐圧溶接も可能になります。そこでは、この光学系によってTruDiskレーザのレーザ光がリングとコアビームに配分された後に、4つのスポットに分割されて適切に配置されることで、共通の溶融池が生み出されます。これにより、常に開いているキーホールが発生することで、蒸気の逃げ道がなくなることが防止され、高速溶接プロセスであっても、気泡と穴のない溶接ビードが実現可能になります。

 

実行

最初にガンプ部長のチームは、アルミニウム製冷却ユニットを既存のマシンで溶接することを試みました。しかしながら、溶接ビードがまずは気密になるものの、用途で必要な圧力に耐えることができず、割れてしまうことが問題になりました。「これはお客様にとって致命的でした。なぜならば、この自動車メーカーは認可前に圧力脈動テストと呼ばれるテストを要求しているからです」とガンプ部長は述べて、こう続けています。「コンポーネント全体が特定の圧力に100,000回以上耐えることが必須条件となっていました。ですが、テストパーツでこれを試したところ、溶接ビードがすぐに割れてしまったのです。」

そこで、hagoのエキスパートたちはTRUMPFと共同で、安定性が高く、そして何よりも連続生産に適しているプロセスの実現に取り組みました。TRUMPFのレーザアプリケーションセンターで試した結果、BrightLine Weldとマルチフォーカス光学系を使用すれば、すべての課題がクリアできることがすぐに判明しました。溶接ビードの安定性は非常に高く、高い圧力にも耐えられるほどでした。しかも、パラメーターが柔軟に設定可能であり、長いビードであってもプロセス安定性が高く、歪みのない高速レーザ溶接が実現しました。これは重要なポイントでしたが、その理由は、冷却ユニットには完全に平坦で、BMCのパワーエレクトロニクスと直接接触して、冷却性能を効果的に発揮することが求められるからです。「現在では、このコンポーネントを平坦度に関して1ミリメートル未満の再現性で製造できるようになっています」とガンプ部長は述べています。

hagoではTruLaser Cell 7040レーザ溶接設備、BrightLine Weld、そしてマルチフォーカステクノロジーを搭載した溶接用光学系に投資して、冷却プレートの連続生産に向けた前提条件を整えました。コンポーネント約3,000個のパイロット生産は既に完了しています。hagoでは今後6年間に、冷却ユニットが610,000個以上生産されることになっています。「大勢の人が不可能であると思っていたことを成し遂げました」とガンプ部長は述べて、誇らしくこう付け加えています。「これが当社の強みなのです。」

展望

バッテリーマネジメントコントローラーに冷却機能を統合するコンセプトは比較的新しいものですが、大きな可能性を秘めています。そのためガンプ部長は、TRUMPFとの協力で得た知識をその他のプロジェクトでも活用できることを期待しています。「このテクノロジーは、当社の戦略方針に完璧にマッチしています」と述べている同部長は、開発作業に膨大な時間を割いたことが報われることを確信しています。

当社製品に関する詳細情報

TRUMPFレーザー溶接 BrightLine Weldコンサルティング
BrightLine Weld

特許取得済みのTRUMPF BrightLine Weldテクノロジーを利用すれば、軟鋼、ステンレス、銅やアルミニウムなどの素材をスパッターの発生をほぼゼロに抑えながら溶接することができます。TRUMPFの革新的な2in1光ファイバーケーブル(LLK)では、インナーファイバーコアとアウターファイバーコアが組み合わされています。この設計を採用することで、レーザパワーをコアとリングに柔軟に配分できるようになっています。そのため、出力配分を各材料に合わせて正確に調整することが可能です。

マルチフォーカス光学系

この新工法は、ステンレスとアルミニウムの気密溶接向けに開発されたものです。その要は、マルチフォーカス光学系とBrightLine Weldテクノロジーの組み合わせです。ここでは、マルチコアファイバーを有するTruDiskレーザのレーザ光がリングとコアに配分され、光学系によって4つのスポットに分割されます。これらが共同で作用して溶融池が生み出されることで、常に開いているキーホールが発生します。これにより、蒸気の逃げ道がなくなることが防止され、気泡による穴の形成が回避されます。

TruLaser Cell 7040

レーザ装置TruLaser Cell 7040を使用すれば、二次元または三次元の部品、ならびにパイプを加工することができます。TruLaser Cell 7040の高いダイナミクスと精度は、アルミニウムの気密溶接を高いプロセス安定性で実行する際の主要な前提条件です。この装置では、切断、溶接とレーザ粉体肉盛りを柔軟に切り替えることができます。TruLaser Cell 7040はモジュール構造になっており、個別にカスタマイズして後付けできるため、生産環境の変更に合わせて常に最適に調整し、様々な要件にフレキシブルに対応することができます。

2025年5月14日現在