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Daniel Kurr

聴覚障害者に役立っているハイテク:インプラントメーカーがTRUMPFのマーキングレーザを使用

まれつき耳が不自由な方は、周囲の音から隔離された無音の世界で生活しています。耳が聞こえないと、健聴者との会話、音声言語の獲得、音楽鑑賞が非常に困難になりますが、MED-ELのおかげで、その状況が変化しています。同社の人工内耳とオーディオプロセッサは、聴覚障害者が再び音を聞く訓練をする際に、または人生で初めて音を聞く際に役立っています。オーストリアのチロル地方に本社を構える同社は、この精緻な金属・プラスチック製部品にコントラストの強いマーキングを施していますが、その工程で同社はTRUMPFのマーキングレーザを使用しています。

パウラはゆったりとお母さんに寄り添って、夢中になっておやすみ前のお話に耳を傾けています。本が好きで、読み聞かせてもらうことをとても楽しんでいます。現在5歳のパウラは、言葉だけでなく音楽も耳で知覚できますが、これは誕生直後はとても考えられないことでした。生まれつき耳が不自由だったからです。両親と兄弟姉妹の声も周囲の音も聞こえませんでした。ドイツでは1,000人に1人の子供が、パウラのように先天性聴覚障害を持って生まれています。その家族は、人工内耳か手話かという決断に迫られることになります。 パウラの両親は、出来る限りバリアフリーの人生を送ってもらいと考え、人工内耳にすることにしました。人工内耳とは、蝸牛に埋め込まれる聴覚機器のことを指します。

複雑なシステム

この聴覚機器はマイク付きオーディオプロセッサとインプラント自体から構成されています。プロセッサは患者の耳の後ろに装着されます。そして周囲の音を検出し、音と音量を調整し、邪魔になる背景騒音を低減し、微細な音を増幅します。インプラントは皮膚の下に埋め込まれます。これは耳の感覚毛の機能を果たし、聴神経を電気で刺激することで、音の知覚を再び可能にします。

Koell_and_Fankhhauser

MED-ELの人工内耳を使用している聴覚障害者の中には、音を聞くのが人生で初めての人もいます。これはMED-ELのディートマー・ケル生産部長(右)とクリストフ・ファンクハウザー生産副部長にとって、日々の仕事での最高のやりがいになっています。

Implant

この聴覚ソリューションは、耳の後ろに装着されるオーディオプロセッサと、皮膚の下に埋め込まれるインプラントから構成されています。MED-ELでは、TruMark 3000シリーズのレーザを搭載したTruMark Station 5000を3台使用して、プラスチック・金属製の部品にマーキングを施しています。

聴覚障害の軽減

オーストリアのインスブルックに本社を置くMED-ELは、人工内耳の開発・製造に特化した企業です。同社の製品群には、埋め込み式と非埋め込み式の聴覚機器が含まれています。家族経営企業である同社では、2,500人の従業員が働いています。顧客層には、診療所や医師に加えて、手術後に患者の世話をする聴覚療法士も含まれています。

MED-ELで生産を取り仕切っているディートマー・ケル部長の表現を借りれば、 「見えないと物事から隔離され、聞こえないと人から隔離されるようになる」とのことであり、同部長のチームはこの状況を変えるために努力しています。「当社では良い製品を提供することで、人々がコミュニケーションや生活の質の支障となる聴覚障害を克服し、生活の喜びを取り戻す手助けをしたいと考えています。これは素晴らしいミッションだと思います。」

人それぞれによって異なる耳

MED-ELでは幅広い製品ラインナップを取り揃えていますが、その理由は、人それぞれが異なるように、耳も、正確に言えば蝸牛も人によって異なるからです。 ケル部長は次のように説明しています。「当社では非常に臨機応変に対応して、お客様からのフィードバックを製品に反映させるようにしています。だからこそ、モジュール構造に基づく非常に幅広い製品ラインアップを展開しているのです。当社では様々なプロセッサとインプラントを提供しています。そしてそれらを、患者それぞれのニーズに合わせて組み合わせています。そうすることで、多種多様な聴力状況それぞれに合う最適なソリューションを生み出しています。」

極小スペースに施される正確なマーキング

従ってMED-ELの生産現場では、小ロットとそれぞれ異なるマーキングが日常茶飯事になっています。そこでは、人工内耳とオーディオプロセッサを組み立てて、金属とプラスチック製の小型部品にマーキングを施しています。現在同社では、2つの傾向が特に大きな懸案事項になっています。まず、装着時の快適性を高めるために、各部品が益々小型化しています。またそれと同時に、製品や製造プロセスのトレーサビリティと記録に対する要件も高まっています。つまり、スペースが減少している一方で、そこに施すマーキングの量を増やすことが必要になっています。それに加えて、マーキングには読み取りやすく、耐久性が高いことも求められています。従って、高水準で確実な加工技術が必要になっています。

High_contrast

MED-ELでは統一的なプロセスを非常に重視していますが、そこでは読み取りやすさを確保するために、高いコントラストが必要になります。この作業をTruMarkレーザが確実にこなしています。

Small_parts

装着時の快適性を高めるために、各部品が益々小型化していますが、それでもマーキングとコードには耐久性が高く、機械で読み取り可能であることが求められています。

強いコントラストと高い耐久性

MED-ELでは、3台のTRUMPF TruMark Station 5000がこの作業を担当しています。TruMark 3000シリーズのレーザを搭載したこのマシンは、チタン、白金イリジウム合金およびプラスチック製の部品にマーキングを施しています。クリストフ・ファンクハウザー生産副部長は次のように説明しています。 「金属・プラスチック製部品に、主にシリアル番号と機器固有識別コード、略称UDIをマーキングしています。ヨーロッパでは、機械で読み取り可能なこの汎用製品識別子を医療製品に施すことが義務付けられています。それに加えて、矢印などの記号や注記も部品にマーキングして、ユーザーにとって使いやすくなるようにしています。」これに関して、MED-ELでは統一的なプロセスを非常に重視していますが、その理由は、マーキングの多くが最終製品で人目に付くからです。そこでは読み取りやすさを確保するために、高いコントラストが必要になります。「そしてもちろん、マーキングには高い再現性が求められます。具体的に言うと、 材料の品質が一定でない場合でも、常に同じ結果が得られなければなりません」とファンクハウザー副部長は強調しています。「そのためには、高い出力安定性が前提条件になります。TruMarkレーザなら、非常に小さな部品であっても、この要件を満たすことができるのです。」

五感を駆使

人工内耳に関して背景で様々な努力がなされていることを、パウラは全く知りません。パウラにとっては、兄弟姉妹と一緒に家の中で朗らかにはしゃぐことも、毎日幼稚園に通うことも日常生活の一部になっています。人工内耳のおかげで聞こえるようになった生活を、五感を駆使して楽しんでいます。

人工内耳の簡単な説明

人工内耳ソリューションは2つの部分から構成されています。耳の後ろに装着され、音を拾うオーディオプロセッサと、皮膚の下に埋め込まれるインプラント本体です。インプラントからは、電極リード線が内耳に通じています。この長くて柔軟な白金線には電極が装着されており、シリコンコーティングが施されています。オーディオプロセッサが音を受信すると、その音が電気信号としてインプラントに送られます。そこで電気パルスに変換され、電極リード線を介して蝸牛に伝えられ、聴神経を刺激します。そこから音を知覚したことが脳に伝えられ、そこで音として解釈されます。難聴の方または生まれつき耳の聞こえない方は、これを使用して聴覚を訓練することができます。インプラントから発生する人工パルスは、自然の音とは響きが異なっています。外国語を学習する場合と同様に、まずは脳を訓練して人工音を理解できるようにする必要があります。そこでは、定期的な言語訓練が役に立ちます。

© MED-EL

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