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e-モビリティが求める、新たな構想

BENTELER社は自動車技術やエネルギー、機械工学といった分野の顧客向けに世界的に事業を展開している家族経営企業です。金属加工のスペシャリストとして、安全性関連の製品・システム・サービスを開発、生産、販売しています。同社の自動車部門であるBENTELER Automotive社は、自動車業界の世界的リーディングパートナーとして、バリューチェーン全体で自動車に関する包括的なノウハウを提供しています。そのポートフォリオに、電気自動車向けのトレンドセッター的システムソリューションの開発があります。BENTELER社の研究開発部門は、ステンレス製の冷却板を組み込んだフォールディング ボックスをベースに、スケーラブルなバッテリーボックス設計を開発しました。TRUMPFのバッテリーパック セクター管理エキスパートチームは、BENTELER社の連続生産用フルオートプロセスチェーンの設計をサポートし、BrightLine Weldテクノロジを使って、穴を形成せずガス漏れ欠陥なしのレーザ溶接でステンレスを加工するレーザ溶接プロセスを提供しました。この課題のために特別に開発されたマルチフォーカス光学系と組み合わせることで、BrightLine Weldは、これまで実現不可能だった、ガス漏れ欠陥なしのアルミニウム溶接をBENTELER社に可能にしました。

BENTELER Automobiltechnik GmbH

www.benteler.com

BENTELER Automotiveは、世界的大手自動車メーカーの開発パートナーです。およそ25か国に70以上の工場と約2万3千人の従業員を擁する同社は、顧客ごとに調整したカスタマイズソリューションを開発しています。製品は、シャーシ、ボディ、エンジン、排気系などのコンポーネントやモジュールから、電気自動車用ソリューションなど多岐にわたります。

業界
自動車産業
従業員数
23,000
事業拠点
ドイツ・パーダーボルン(Paderborn)
TRUMPF製品
  • TruLaser Cell 8030
アプリケーション
  • レーザ切断
  • レーザ溶接
  • レーザーパイプ切断

課題

電気自動車のいわゆる“心臓部”には、高電圧バッテリーとそれを保護するバッテリーボックスがあります。バッテリーボックスは、敏感なセルを衝突などの影響から保護するだけでなく、湿度や温度の変動といった、バッテリーの性能に悪影響を及ぼすおそれのある要素からも保護します。バッテリーボックスは、これまでは、主にアルミニウム合金を使用して製造されていました。アルミニウム合金は軽量という特長があり、この軽量さにより車両の航続距離の最大化を図っています。ですが、BENTELER社自動車部門でエンジニアとして開発に携わっているクリスティアン ブーゼ氏とコンラッド フリッシュコーン氏は、素材としてのステンレスにも大きな可能性があると考えています。二人は、フォールディング ボックス コンセプトと銘打つ、柔軟性と拡張性を備えた特別な設計のバッテリーボックスを協同開発しています。これには製造の高度なプロセスノウハウが求められます。このことについて、ブーゼ氏は次のように説明しています。「私たちは、製造プロセス全体の設計に、TRUMPFのサポートを求めました。バッテリーパックのセクター管理に携わるエキスパートにとって、ガス漏れ欠陥なしでステンレスを溶接するため、高速かつ再現性の高いレーザ溶接プロセスを開発することが大きな課題でした。

レーザでアルミのシール溶接をするのはやめておけというのが大方の意見でした。しかし、それはむしろ私たちを奮い立たせることになりました。

クリスティアン ブーゼ
BENTELER社、自動車部門研究開発チームリーダー

ソリューション

TRUMPFでバッテリーパックのセクター管理を担当しているマウリッツ ミョラーは、BENTELER社が開発した冷却板内蔵バッテリーボックスの連続生産に向けて、テクノロジおよび応用分野のエキスパートチームの協力の下、パンチング、切断、曲げテクノロジによるフルオートプロセスチェーンを開発しています。レーザを使ったガス・ヘリウム漏れ欠陥なしのパーツ溶接は、TRUMPFが提供しているテクノロジ「BrightLine Weld」なら、可能です。BrightLine Weldを使用することで、連続生産の高い速度でもスパッターの発生を抑えながらステンレスを溶接することができます。  これにより、パーツの後処理が必要なくなるので、マシンや焦点合わせ光学系の保護につながります。BENTELER社としては、このテクノロジを使って、ガスやヘリウム漏れ欠陥なしの完璧な継目を作ることが重要な課題です。これについて、「プロセスの回転数が高いため、熱エネルギーを調整して投入する必要があります。そうすることでのみ、溶接中に安定した溶融槽を確保することができます」と、ミョラーは説明します。「穴が形成されてしまうことを、 BrightLine Weldが防いでくれます。」この開発の成功がきっかけで、BENTELER社の開発エンジニアとTRUMPFのエキスパートチームは、バッテリーボックスもアルミニウムも、レーザで溶接するという目標を掲げました。マウリッツ ミョラーとチームは、BENTELER社専用に、いわゆるマルチフォーカス光学系を開発しています。BrightLine Weldと組み合わせることにより、これまで実現不可能とされていたガス漏れ欠陥なしのアルミニウム溶接が可能になります。

 

実行

BENTELER社は、多岐にわたる分野で戦略的開発パートナーシップに頼っており、クリスティアン ブーゼ氏は次のように説明しています。「私たちは、自社の能力を補完してくれる会社をパートナーに選んでいます。私たちの顧客は、そうした補完により結集された専門知識を、とりわけ開発期間短縮の面で活用することができます。」そして、TRUMPFのバッテリーパックのセクター管理との協力関係では、同じ目線でのコミュニケーションを大切にしていると言います。「テクノロジのエキスパートチームとの協力や、応用分野に精通したエキスパートチームとのテスト機会が、TRUMPFの顧客として私たちに非常に力になっています。」そして、オープンなコミュニケーションと多くの信頼関係が、このような協力関係の基礎になっています。「合いさえすれば」と、ブーゼ氏は頷きます。「関係者全員が、協力することにより得られるものがあります。」

展望

BENTELER社は、市場が今はまだ求めていなくても、常に新たなソリューションを生み出しています。「私たちは、あらゆることに備えたいと考えています。そしてそのために、あらゆる方面にアンテナを張り巡らせています」と、コンラッド フリッシュコーン氏は言います。e-モビリティ、とりわけバッテリーモジュールやバッテリーボックス設計、車両構造の分野では、開発ははじまったばかりだとブーゼ氏とフリッシュコーン氏は確信しています。二人は、アルミニウムをガス・ヘリウム漏れ欠陥なしでレーザ溶接するTRUMPFのソリューションを使用して、実証実験を行っています。このプロセスが実際の連続生産時にどの程度安全かつ再現性があるのかについて、ちょうど調査が行われているところです。

当社製品に関する詳細情報

TRUMPF-溶接-アプリケーション-BrightLineWeld
BrightLine Weld

特許取得済みのTRUMPF BrightLine Weldテクノロジを利用すれば、軟鋼やステンレスだけでなく、銅やアルミニウムなどの素材もほぼスパッターなしで溶接することができます。特許取得済みのTRUMPF デュアルコア光ファイバーケーブル (LLK) には、インナーとアウターファイバーコアが含まれています。そのため、レーザー内部でレーザパワーを柔軟にコアとデュアルコア光ファイバーのリングに、用途特有の最適な状態で配分することができます。そうして、材料に応じて出力配分を完璧に調整し、求める結果を得ることができます。

TRUMPF Fokussieroptiken der BEO-, RFO- und CFO-Optiklinie für das Laserschweißen und -schneiden
マルチフォーカス光学系

TRUMPFは、アルミニウム鋳造部品をガス漏れ欠陥なく溶接するために、新たな加工方法を開発しました。その要ともいえるのが、BrightLine Weldテクノロジを組み合わせたマルチフォーカス光学系です。BrightLine Weldは、マルチコアファイバーを搭載したTruDiskレーザのレーザ光をリングとコアの間で配分する機能があります。また、加工光学系BEOがこれを、4つの個々のスポットに分割します。これらはそれぞれ、リングとコアで分割して重ね合わされ、溶融槽のように作用するように相互に配置されます。これにより、連続的に開いたキーホールが形成されます。これが、蒸気路の崩壊と、その結果で生じるガス気孔による穴の形成を防止できます。