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AIを利用して溶接位置を検出

セル接触システム(CCS)は、電気自動車の個々のバッテリーセルをひとつのユニットにまとめて、バッテリーから負荷に電力を伝達するための基盤を形成しています。CCSにはそれ以外の機能もあり、例えば電圧・温度監視用センサーの役目も果たしています。CCSはすべての測定信号を、導体経路を介してバッテリーマネジメントシステムに転送しています。この重要なコンポーネントの連続生産では、ゼロエラーストラテジーが適用されます。通常、一般的なCCSでは溶接位置が10~20箇所あり、連続生産ではレーザがその位置を検出し、非常に高い精度で接合しなければなりません。ですが、ElringKlingerが現在連続生産している新しいセル接触システムは、工程開発担当者にとって非常に困難な課題となりました。長さが2メートル強で、溶接位置が50箇所以上ある部品の加工向けに、サイクルタイムが短く、安定性と効率が高い連続生産工程を開発することが求められたからです。このプロジェクトは、TRUMPFの新しいEasyModel AIトレーニングプラットフォームと、VisionLine DetectのAIフィルターオプションを組み合わせることで成功しました。

ElringKlinger AG

www.elringklinger.de

ElringKlinger AGは自動車業界の独立系サプライヤーで、世界中に拠点を構えています。同社は乗用車と商用車分野で、あらゆるタイプの駆動システムに対して革新的な製品ソリューションを提供しています。電気モーター、ハイブリッドやエンジンなど、様々な駆動システムに対応しているElringKlingerは、ユーザーにとって強力で頼もしい開発パートナー・量産品サプライヤーであり、持続可能なモビリティに関して豊富な経験とノウハウを有しています。ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州デッティンゲン・アン・デア・エルムスに本社を置く同社は、世界中に40以上の拠点を構えています。

業界
自動車産業
従業員数
9,000
事業拠点
デッティンゲン・アン・デア・エルムス(ドイツ)
TRUMPF製品
  • EasyModel AI

アプリケーション
  • レーザ溶接

課題

電気自動車の新しいバッテリーパックが益々複雑になっているのに伴い、その中に搭載されているセル接触システム(CCS)も複雑化しています。特に、バッテリーの充電時に求められる電力が日増しに高まっており、例えば超急速充電では300キロワット以上になっています。その結果、革新的なCCSでは溶接位置が非常に多くなることがあり、それをレーザで短いサイクルタイムでゼロエラーストラテジーで溶接することが求められています。また、バリエーションが多いことに加えて、溶接時に考慮する必要がある異種金属接合が多数あることも課題になっています。しかも、これまで一般的であったモジュール・トゥ・パック設計ではCCSの長さが約600ミリメートルであったのに対し、革新的なセル・トゥ・パック設計では最大2メートルに達します。これによって必要になる複雑な治具は、衝突要素の原因になる可能性があります。レーザによる溶接位置の接合では、これも考慮しなければなりません。

ElringKlingerのドイツ・ノイフェン拠点に所属するダニエル・ヴェラー氏とそのチームは、レーザプロセスの開発、テストと設計を担当しています。このチームはパイロット生産設備で、CCSをElringKlingerのどの拠点のどの製造ラインでも問題なく同じ品質で製造できるようにするための前提条件を生み出しています。

特徴検出で、日単位でなく、時間単位で良い結果が得られるようになっています。

ダニエル・ヴェラー工学博士
ElringKlinger AGバッテリーテクノロジー事業分野接合技術エキスパート

解決策

ダニエル・ヴェラー氏がTRUMPFレーザアプリケーションセンターを訪問した際、検出システム領域での新開発品に注意が向きました。「これまではTRUMPFの画像処理ソフトウェアVisionLine Detectを使用していたのですが、これでも一般的なセル接触システム(CCS)の加工で非常に役に立っていました」とヴェラー氏は語っています。そこにクラウドベースのEasyModel AIトレーニングプラットフォームが登場したことで、TRUMPFのシステムが更にレベルアップしたのです。EasyModel AIと、TRUMPFの画像処理システムVisionLine DetectのAIフィルターオプションを組み合わせれば、環境条件の変化、部品の反射、照明状況の変化、材料特性の変化が検出されます。「TRUMPFのEasyModel AIが正式に提供されるようになった少し後に、当社は複雑なセル接触システムを受注したのですが、これは長さが2メートルで、溶接位置が50箇所あり、難題になっていたのです。そのため、EasyModel AIの登場はちょうどいいタイミングでした」とヴェラー氏は述べています。

EasyModel AIは、プログラミングの知識がないユーザーであっても、独自の画像ベースのAIモデルを部品にピタリと合わせて極めて簡単に作成し、トレーニングすることができるツールです。「まず第一に、VisionLine Detectを使用して、溶接位置を設定する必要がある部品のセグメントの画像を撮影します。この画像をQuality Data Storageを使用して保存した後に、EasyModel AIにアップロードするのですが、このツールにはMyTRUMPFプラットフォームから簡単にアクセスできるのです」とヴェラー氏は説明しています。プロジェクトの作成後、ヴェラー氏とそのチームメンバーは検出する必要がある溶接位置に画像上で印を付け、AIがモデルの評価と計算を開始します。このモデルは、オペレーターが直感的に少しずつ最適化することができます。わずか数枚のトレーニング画像で、正常に機能するAIモデルが完成します。満足のいくモデルが出来上がり次第、それが製造ラインに適用されます。そこでは、VisionLine DetectのAIフィルターオプションが使用されます。このフィルターは、関連する画像領域と治具、汚れや反射などの領域を正確に区別します。「ここでは、VisionLine DetectでAIフィルターがある場合とない場合の差が非常に明確になっています」とヴェラー氏は述べて、次のように続けています。「AIフィルターにより画像が二値化され、黒と白のみで表示されるようになります。検出された部品が白くなる一方で、その周辺領域は黒で表示されます。これまでElringKlinger AGでは、TRUMPFの画像処理システムVisionLine Detectを、位置に応じた露光設定で使用していました。これにより、検出する必要のある溶接領域をエッジ検出アルゴリズムが問題なく識別できるようになります。」これまでヴェラー氏とそのチームは、TRUMPFの画像処理システムVisionLine Detectを、位置に応じた露光設定で使用していました。そしてこの設定を意図的に変更して、それぞれの位置を確実に検出していました。ですが、このプロセスは加工エリア内でそれぞれの位置に合わせて個別に調整して、部品表面の反射の違いを補整しなければなりませんでした。この方法は時間がかかり、様々な影響要因に左右されていたほか、それぞれの部品位置に関して別々に実行しなければなりませんでした。

 

実行

ElringKlingerでは、EasyModel AIとAIフィルターのオプションを有効にするだけで新しい解決策を導入することができ、しかもこの導入段階は短期間で済みました。「パイロット生産設備の運転開始作業中、TRUMPFの従業員が直接部品に携わって、すべてのプロセスステップを通してサポートしてくれたのです」とヴェラー氏は語っています。「1、2時間後には、最初の部品が完成しました。」現在では、不明な点がある場合にはTRUMPFのエキスパートがリモートまたはTeamsセッションによる非常に簡単な方法で質問に回答しています。この協力は、TRUMPFのQuality Data Storageを使用することで行いやすくなっています。そこにはデータをアップロードして保存して、必要に応じてTRUMPFのスペシャリストと共有することができます。

ヴェラー氏は、EasyModel AIの主なメリットのひとつとして、トレーニングプロセスが簡単であることを挙げています。「日単位でなく、時間単位で良い結果が得られるようになっています。」また、良い結果を得るのに予備知識が不要になったことも重要なポイントです。「これは、連続生産が立ち上がり、各拠点で経験が浅めの作業者が微調整を行わなければならない場合に、特に重要です。このシステムは『WYSIWYG』の原理で稼働しています。これはプログラマーでない作業者にとっても理解しやすい仕組みです」とヴェラー氏は述べています。微調整が行えることは、同氏とそのチームメンバーにとってもメリットになっています。「CCSはそれぞれ別の構造になっているのですが、時によっては、その違いはごくわずかなのです。AIを導入したことで、CCSの既存のトレーニング画像を新しいモデルの基盤として利用して、ごくわずかな違いをトレーニングし直せるようになっています。これは開発段階のより一層のスピードアップにつながっています。」

展望

「乗用車向けのセル接触システムでは、長さ2メートルのものが登場したことで、これ以上要件が高まることはないと思っています」とヴェラー氏は述べて、こう付け加えています。「ですが、セル・トゥ・パックのバッテリーパック設計は、トラックでも適用される傾向が強まっており、ここでは将来的にCCSが更に大型化して複雑化すると予想しています。」もちろん溶接位置の特徴検出は、今後も単純な画像処理システムで出来ないことはありませんが、EasyModel AI、AIフィルターやVisionLine DetectなどのAIベースのソリューションを使用すれば、より素早く簡単に実現することができます。「連続生産の立ち上げでは、工程が確実で再現性が高いことがまず第一に重要になりますが、スピードも考慮する必要があります」とヴェラー氏は述べています。「開発にかかる日数が1日でも増えるごとにコストも増加し、市場投入が遅れてしまいますから。」既に現時点でヴェラー氏とそのチームは、これまでは手間がかかりすぎていた少量生産やサンプルパーツでもEasyModel AIを活用しています。同氏は、ElringKlingerにはこれ以外にもEasyModel AIを使用できる工程があると考えており、「このソリューションには、許容誤差が小さいところで溶接位置を設定する必要がある用途では、どの場合でも大きな可能性があると思っています」と締め括っています。

当社製品に関する詳細情報

EasyModel AI

治具の汚れ、部品からの反射光や照明状態の変化などの様々な環境条件が重なると、レーザ光を配置するための特徴検出が困難になりますが、そこで人工知能を活用すれば、この問題を解決することができます。EasyModel AIは、クラウドベースのAIトレーニングプラットフォームであり、これを使用すれば、プログラミングの知識がないユーザーでも非常に簡単にデータラベリングを行うことができます。そして、わずかなトレーニングデータだけで、高性能のAIモデルが得られます。このモデルは、VisionLine DetectのAIフィルターオプションと共に使用することが可能です。EasyModel AIとTRUMPFの画像処理システムを組み合わせれば、これまでとの違いが感じられ、大きなメリットがもたらされます。

VisionLine Detect

TRUMPFの画像処理システムVisionLineは、部品での欠陥防止に役立ちます。このカメラベースの画像処理システムは、切断/溶接用途で全てを把握します。VisionLineは部品の位置を自動的に検出し、その情報をコントローラーに転送します。センサーに基づいて生成されたこの3D情報は、部品の特徴の位置決めや点検に、例えば2番目の部品の高さの違いの検出などに利用することができます。

2025年6月11日現在