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Jennifer Lieb

マシンを安全にしているTRUMPF

T RUMPFは膨大な時間と費用をかけて、お客様とオペレーターのためにマシンを安全にしていますが、特にアジアの低価格を謳う競合他社ではそうではないことが少なくありません。マシンが安全でない場合は、オペレーターだけでなく各企業にも危険が及び、損害発生時には責任を負わなければならないことになってしまいます。

TRUMPFのディッツィンゲン本社にあるCustomer Centerで、230トンのプレス力を誇るTruBend 5230が、板厚数ミリメートルのステンレス鋼板をあたかもぐにゃぐにゃの板であるかのように曲げている場面で、 TRUMPFのマシンオペレーター、アンドレアス・クーフが板金を曲げツールの間に正確に配置して、マシンを始動しようとしたところ、 TruBendが突然停止しました。クーフの手が曲げツールに近づきすぎたからです。内蔵型レーザセーフティシステムBendGuardが危険を検出して、マシンを瞬時に停止させたのです。これを例とするセーフティシステムを搭載することで、TRUMPFマシンは世界中で安全に稼働しています。

製品の安全性を最初から考慮

昨年ドイツ同業者労災保険組合には、報告義務がある労災が780,000件以上届け出られました。その四分の一は、マシンやツールの取り扱い中に発生したものです。大抵の大手機械メーカーは膨大な時間、費用とイノベーション力をかけて、そのような事故を防止しています。TRUMPFでは、本社のProduct Compliance部門が各種マシンタイプの安全スペシャリストと共同で、マシンを可能な限り安全にしています。その作業は、開発段階でリスクアセスメントを繰り返し行うことで始まり、お客様の現場での設置時に安全技術面で検収した後もさらに続いていくことになります。運転開始前に、TRUMPFのエキスパートはお客様の従業員に対して、マシン機能だけでなく安全に関連するすべての項目も含む包括的なトレーニングを提供しています。

操作パネル:デモンストレーションエンジニアのウリ・シュラーデが、すべての安全パラメーターがディスプレイでひと目で確認でき、その後でレーザを安全に起動できることを実演しています。

BendGuard:安全上の注意がマシンオペレーターの目の前にある一方で、BendGuardの機構は目に見えませんが、この機能は万が一の場合にマシンを瞬時に停止しています。

輸入品に見受けられるリスク

しかし、特にレーザ切断機で目立つのですが、ヨーロッパの工場で現行のEU安全基準を満たさない装置が見受けられるようになって久しくなっています。板金加工に関してヨーロッパで2大見本市に数えられるBlechexpo 2021でも、この問題が明らかになりました。見本市訪問者が、アジア製のあるレーザ切断機の内部につながるドアを、同機がまだ稼働している間に開けたところ、レーザ光が放射され続けたのです。これは、レーザ光によって目に甚大なリスクが発生し得る危険な状況でした。

このような事件から市場監督官庁も教訓を得て、現在では見本市で、展示マシンが安全基準を満たしているかどうかを定期的に点検するようになっています。そして、違反を発見した場合はマシンを停止して、「不適合」のマークを付けています。それでも一部のメーカーが、特にアジアのローコストメーカーが上記の規則を引き続き無視しているため、見本市の訪問者がドアが開いているか光線防護装置が欠けているマシンを目にする状況が依然として続いています。監督官庁による点検は必ずしも完全ではありませんが、TRUMPFの取り組みの効果も出ていると見られ、最近では徹底されるようになっています。

安全なドアとガラス

TRUMPFのディッツィンゲン本社に戻りましょう。TruLaser 5030のレーザ光が、火花を飛び散らせながら板金を極めて正確に切断しています。その場面で、デモンストレーションエンジニアのウリ・シュラーデが内部へのドアを揺さぶりましたが、ドアは閉まったままです。仮に強引にこじ開けようとした場合は、マシンが即座に停止することになります。ドアスイッチによってマシンの運転が妨げられるからです。自動装置が稼働しており、別に防護されている危険エリアに誰かが立ち入ると、ドアスイッチ、ライトバリアや同様のメカニズムが作動して、同装置は即座に停止します。また、ドアのガラス越しにレーザ切断の様子を眺めている場合に、視力低下について心配する必要はありません。特殊なレーザ保護ガラスが採用され、レーザクラス1に該当しているため、目の損傷が防止されるからです。

TRUMPFの生産安全エキスパート、ソニア・プフェニンガーは、それ以外にも目に見えない安全対策が講じられていることを指摘しています。例えば、健康に有害な粉塵を集塵機が瞬時に取り除いています。複雑なライトバリアシステムを使用して、装置を別々の危険エリアに区分することで、オペレーターが安全かつ快適に作業できるようになっています。また、特定の作業を行うには、ペダルやボタンを意図的に押すなどして、安全装置を意識的にリセットすることが必要になっています。

「多くのマシンには、厳格なルールが存在しています」と、TRUMPFオーストリアでプロダクトマネジメント・国際営業部長を務めているアレキサンダー・クンツは述べています。「ただし残念なことに、一部の競合他社はそれを守っていないのです。」 クンツは、「保護めがねを着用してください」との標識が付けられたマシンを見たことがあると言っているのですが、これは、ドアガラスがレーザ保護ガラスではないことを明確に示しています。また、CEマークを偽造して安全性を偽装し、ヨーロッパの安全要件を大幅に下回っているマシンを見たことも一度ではなかったとのことです。

オペレーター、所有者、メーカーを保護

「オペレーターを怪我から、企業を経営リスクから守りたいと思っています」とクンツは述べています。マシンが安全でない場合は、特に中小企業にとって存続の危機につながりかねません。損害発生時にはマシン所有者も責任を負うことになるからです。

TRUMPFは、様々な局面で労働安全に力を入れています。Blechexpoでの事件後、クンツとプフェニンガーを主要メンバーとしたチームが、レーザ切断機の安全性に関するチェックリストを作成し、ドイツ連邦労働安全衛生研究所の認定を受けました。TRUMPFはこのチェックリストを使用して、市場監督官庁(MSA)の職員にトレーニングを提供して、安全性を損なう瑕疵が発見しやすくなるようにしています。

安全の隙間を埋める

TRUMPFのサービスエンジニアはお客様の現場に出向く際に、自分の身を守るためにもマシンが危険であるかどうかに注意しています。瑕疵を発見した場合は、お客様にそのことを書面で通知しています。そのようなマシンがサービスエンジニアの作業エリアのすぐ近くで稼働している場合は、状況に応じてそれを停止するようにお願いしています。

安全でないマシンのレトロフィットは高額になることがあり、5桁の金額になることも稀ではありません。そのためTRUMPFとその他のヨーロッパの機械メーカーは、輸入業者が輸入マシンでも当地の安全基準を遵守すること、そして官庁がそれをこれまでよりも徹底的に点検することを要求しています。

チェックリスト:アレキサンダー・クンツはTRUMPFの他の安全エキスパートと共に、レーザ切断機の安全性に関する包括的なチェックリストを作成しました。現在では、市場監督官庁もそれを業務に使用するようになっています。

ライトバリア:目に見えないライトバリアを張り巡らせることで、安全エリアに誰もいない場合に限りTRUMPFマシンが稼働するようになっています。

複雑な市場監督

そこでヨーロッパの主要機械メーカー6社は、政界と欧州工作機械工業連盟(CECIMO)に請願書を提出しました。そして同書内で、ヨーロッパの市場監督官庁(MSA)の一元化を要求しています。現在のMSAの数は、ドイツだけでも約500に、ヨーロッパでは約2900に上っています。使用しているITシステムは50種類を超え、既存の規定の解釈も異なっています。CECIMOは経済界、税関と市場監督官庁の協力体制をより密接にして、欧州一般製品安全指令・規則が確実に遵守されるようにする案に賛成しています。またそうなれば、競争の公平性も高まることになります。

「はっきり言うと、機械安全には膨大な時間と費用がかかるのです」とクンツは述べ、数多くの安価なマシンの価格ではとても賄うことはできないと続けています。 そして板金業界に対して次のメッセージを発しています。「マシン購入者には、輸入マシンでは自分の目で確かめることを強くお勧めします。念のためにご自身でもう一度点検してください!」

TRUMPFでのサイバーセキュリティ

TRUMPFでの安全にはマシンだけでなく、デリケートなデータの保護も含まれています。そのためサイバーセキュリティは最優先事項であり、お客様のデータの場合は特に重要になっています。

 

TRUMPFはこれらの措置を講じることで、データ、製品とプロセスのセキュリティをあらゆる局面で高めています。

措置は3つの主要領域に集中しています:

  • 情報セキュリティ:社内データおよびお客様固有のデータを保護するため、TRUMPFのディッツィンゲン本社では、全事業分野でISOガイドラインに準拠した認証を取得しています。それと同時に、エキスパートがネットワーク・情報セキュリティに関するEU指令の具体的な運用を準備しています。同指令では、セキュリティインシデントが発生した場合には厳格な報告義務が定められています。
  • 製品セキュリティ:TRUMPFは、デジタルコンポーネントに関して拘束力のあるセキュリティ要件を規定しているEUサイバーレジリエンス法の基準に従いながら製品を開発しています。ソフトウェアを安全なプロセスで開発し、リスクを詳細に分析し、セキュリティアップデートを定期的に行うことで、製品の信頼性を高めています。
  • ITセキュリティ:サイバーセキュリティロードマップを毎年更新することで、明確な目標を設定し、TRUMPFのITセキュリティレベルの向上を一貫して推進しています。
作成日 2025/12/11
その他参考情報
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