軽量かつクリーンで、ほぼ無限に存在する水素は、未来のエネルギー資源と考えられていますが、この何気ない元素は取り扱いが難しく、摂氏マイナス253度にまで冷却しなければ液化できず、気体では膨大な貯蔵スペースが必要になってしまいます。 そのため、有望なこの資源を車両や産業設備に使用する場合には、すぐに技術的な難題に直面してしまいますが、まさにそれを、設立間もないハイテク企業NITIUが変えようとしています。 同社が開発し、特許取得済みの等方性軽量構造(ILS®)は、無数の正四面体から成る金属結晶格子であり、超軽量であると同時に非常に高い安定性を有しています。等方性とは、構造がどの方向にも同様に反応し、どの側面からも力を良好に吸収できることを意味します。まさにこの特性が、どの方向からの負荷にも耐え、エネルギー資源としての水素を効率的に貯蔵する新種の水素タンクにとって理想的なベースになっています。この革新的なコンセプトの製造で、NITIUではレーザを活用しています。
高精度を可能にするラボ
「4年前にNITIUに入社した時、レーザ加工はまだ重要ではありませんでした」と、同社のジョーゼフ・ヘインズワース技術部長は語っています。「ですが、当社が開発した構造を精密に結合し、その安定性を最大限に活用するには、レーザが鍵になることにすぐに気づいたのです。」ツールとしてのレーザを狙い通りに利用できるようにするに当たって、同部長とそのチームは、ILS®構造のテストやその他の開発作業向けにカスタマイズした独自のレーザラボが必要だと考えました。「そこでのポイントは、他社に依存することなく作業し、品質を高め、開発サイクルを大幅に短縮することにありました」と説明している同部長は、 用途に合うテクノロジーを求めて、1年間ヨーロッパ中を探し回ったのです。
ハイテクとフレキシビリティーの融合
目当てのものはTRUMPFにありました。「マシンを注文する約6か月前に、TRUMPFのレーザエキスパートと徹底的な打ち合わせを始めました」と同部長は当時を振り返っています。「当社では、各システムがフレキシブルで相互補完することを重視していたのですが、担当者の方々はまさにそのことを理解してくれたのです。」新しいレーザラボでは、TruLaser Cell 3000、TruLaser Weld 5000とPFO 3D光学系(スキャナー光学系)が中核を成しており、精密溶接が二次元と三次元で実現するようになっています。TRUMPFはこの組み合わせをNITIU専用にカスタマイズし、光学系に精密制御可能なミラーを装備し、レーザが三次元空間で移動できるようにしました。「この移動では、精度も速度も驚異的です」と同部長は述べています。「この光学系は、当社がこれまでに使用した中で最もフレキシブルなコンポーネントです。」
スピード、品質、大きな喜び
レーザラボの開設後、NITIUでの作業では格段に変化しています。「以前は、コンセプトでの変更内容をテストできるまで数週間かかっていました。それが今では、朝ラボに行って、何かを試して、翌日に実行に移せるようになっています」と同部長は喜んでいます。「品質が向上し、プロセス安定性が高まっていることに加えて、常に新しい知見が得られています。」TRUMPFは、各システムをNITIUでのプロセスにピタリと合わせて調整し、すべてのコンポーネントを組み合わせて、ターンキーソリューションを生み出しました。「複数のメーカーに依頼することもできなくはなかったのですが、 最終的には、すべてを一手に提供するというTRUMPFのコンセプトが決め手になったのです。そのおかげで、当社では自社のテクノロジーに、つまり一番得意な分野に集中することができたのです」と同部長は説明しています。
未来に向けて一歩前進
新しいレーザセンターはNITIUにとって、水素タンクの効率と安全性の向上ならびに軽量化に向けて、大きな一歩を踏み出したことを意味しています。軽量化と安定化を目指すビジョンとして始まったものが、レーザで製造することで具体的な形になりつつあります。「時々夢ではないかと頬をつねることがあるくらいです」と同部長は笑いながら語っています。「これほど素晴らしいことはありませんから。」
スウェーデンのイェヴレに2016年に設立されたNITIU ABは、革新的な金属軽量構造の開発製造に特化している企業です。NITIUが特許を取得しているILS®テクノロジーは、陸海空の持続可能なモビリティにとって重要な要素である材料とエネルギーの利用効率向上に貢献しています。






