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温度が快適な電気自動車

ドイツメーカーWebastoは、世界中の50以上の拠点で自動車業界向けコンポーネントを製造・販売しています。その中で、ノイブランデンブルク工場ではヒーターに焦点が当てられています。電気自動車でヒーターが稼働するには熱交換器が不可欠であり、それによって車内が快適な温度に保たれるだけでなく、バッテリーも理想的な動作温度に維持されます。 それ以外のコンポーネントと同様に、ヒーターにも「小型で軽量であればあるほど良い」という原則が当てはまります。そこでWebastoでは高電圧ヒーターを開発しましたが、薄膜技術を採用したこのヒーターは市場で最もスリムな機器となっています。ノイブランデンブルク工場のイェルン・シュマーレンベルク電気ヒーター製造技術責任者はこう述べています。「冷却水が流れているコンポーネントと近い位置にあるため、熱を水に伝えるための反応時間が非常に短くなっています。この特殊な構造を採用することで、ヒーター出力をほぼ無段階で調整することが、400ボルトでも800ボルトでも可能になっています。これに成功したのは当社が初めてです。」Webastoではその製造で、TRUMPFの3種類のハイエンドレーザアプリケーションを活用しています。

Webasto Thermo & Comfort SE

www.webasto.com

設立が1901年にまで遡るWebastoは、1932年から自動車業界向けに各種コンポーネントを開発・製造・販売しており、現在では世界中に50以上の拠点を有するに至っています。エンジン車用ヒーターシステムと革新的なルーフシステムのセグメントで同社はマーケットリーダーであり、ヨーロッパでの市場シェアは70パーセントに達しています。そして既に2012年から、EV用ヒーター、バッテリーや充電ソリューションなどのEモビリティにも取り組んでいます。新しいアイディアを継続的に生み出し、素早く市場に投入するため、Webastoでは州支援プロジェクトでSchweißtechnische Lehr- und Versuchsanstalt(SLV:溶接技術教育・試験所)およびロストックのFraunhofer IGPと協力しています。

業界
自動車業界向けコンポーネント
従業員数
16,500
事業拠点
ノイブランデンブルク(ドイツ)
TRUMPF製品
  • TruDisk(16 kW)
  • TruDisk Pulse(グリーン波長)
  • TruMicro 5080超短パルスレーザ
アプリケーション
  • アルミニウム溶接
  • 銅溶接
  • ストラクチャリング

3つの課題

気密溶接:電気自動車のヒーターでは、液体が暖房ラインを通って流れています。「当たり前のことですが、液体は電気自動車の高電圧とは相容れない存在なので、アルミニウム製ハウジングの気密溶接は完全でなければなりません」とシュマーレンベルク製造技術責任者は述べています。ですが、アルミニウムの気密溶接はそう簡単ではありません。真空状態での電子ビーム溶接は、電気自動車の大量生産には遅すぎると同時に高すぎます。また、高速レーザ溶接では気泡が頻繁に発生するため、気密性に問題が出てしまいます。

銅の正確な溶接:電流がきちんとヒーターに流れ込むようにするには銅が必要ですが、もちろんこの銅も溶接しなければなりません。高反射材である銅は、レーザ接合が難しい材料です。また、溶接ビードを深くすると、その下にある層に危険が及んでしまいます。「従って、レーザの溶接深さを正確に制御できる必要があります。従来の赤外線レーザでは限界に達してしまいました」と同責任者は語っています。

導体パターンのストラクチャリング:ヒーターを出来る限り薄くするため、Webastoでは導体を取り付けるのではなく、表面の薄い金属膜に直に施すことを考えました。「ストラクチャリングでは、きちんとした削剥と正確なエッジを求めています。不良品になるリスクが生じてしまうため、材料が溶融してはなりません」と同責任者は述べています。

銅溶接ではグリーンレーザだけに頼るようになっています。

イェルン・シュマーレンベルク
Webastoノイブランデンブルク工場製造技術責任者

3つの解決策

気密溶接:Webastoでは、大気圧下でシールドガスなしで稼働する高速・高出力ディスクレーザを使用しています。シュマーレンベルク製造技術責任者は次のように述べています。「レーザパワーが高いため、安定したキーホールが得られています。『多ければ多いほど良い』と言ったところでしょうか。気泡が発生する間もないほどになっています。」

銅の正確な溶接:TruDisk Pulse 421のグリーンレーザ光では、銅への吸収率が高くなっています。同責任者は喜んでいます。「パルスシーケンスを正しく設定することで、溶接深さが極めて高い繰り返し精度で実現可能になっています。それにスパッターも発生しませんし、シールドガスも不要ですし。また、製造した部品は何百万個にも及びますが、まだ不良品はありません。全体的に見て、以前よりもはるかに落ち着いて製造できるようになっています。銅溶接では一貫してグリーンのパルスレーザシステムだけに頼ることにして、それ以外は使用しなくなっています。」

導体パターンのストラクチャリング:WebastoではTruMicro超短パルスレーザを利用して、導体パターンのストラクチャリングを直接金属に施しています。「材料のストラクチャリングでは極めて高い精度で制御して、レーザ加工が深くなりすぎて下の層に入り込むことを防止することが重要になります。材料が固体から一気に気体になる超短パルスレーザを使用して初めて、希望通りのフラットな製品設計が可能になるのです」と同責任者は説明しています。

 

実行:パワー3倍

「当社では、新製品を出来る限り短期間で市場に投入できるレベルにすることを重視しています」とシュマーレンベルク製造技術責任者は語っています。「そのため、TRUMPFのレーザをすぐにテストできたことはとてもラッキーでした。」また、これには研究機関との良好なパートナーシップも含まれています。それが功を奏して、Webastoでは自社製品と製造現場を非常に高い水準で維持できるようになっています。「従って、多くの場合ではTRUMPFのレーザしか考慮の対象になりません。」

展望

人件費の高いドイツで生産活動を行っているWebastoなどの企業では、レーザなどの経済的な生産技術を活用した高度なオートメーションが不可欠です。また、新しいレーザテクノロジーなどによる高度な技術革新も欠かせません。それが、Webastoがグローバルプレイヤーとして名を馳せている理由です。「当社などのヨーロッパメーカーが提供している最高級の電気技術コンポーネントなしで製造されている電気自動車は世界中でほとんどないと言えるでしょう。」

当社製品に関する詳細情報

マルチフォーカス光学系

TRUMPFは、アルミニウム鋳造部品の気密溶接で新しい工法を生み出しました。その要とも言えるのが、マルチフォーカス光学系とBrightLine Weldテクノロジーの組み合わせです。このテクノロジーでは、マルチコアファイバーを搭載したTruDiskレーザのレーザ光がリングとコアの間で分配され、4か所のスポットに分割されます。このスポットを溶融池に狙い通りに配置することで、キーホールが常に開いている状態になります。これにより、蒸気の逃げ道がなくなることが防止され、気泡による穴の形成が最低限に抑えられます。

TruDisk - 高出力固体レーザ

TruDiskは金属の溶接、切断および表面加工に適した高出力固体レーザです。このレーザは、高出力と最高レベルのビーム品質が求められている領域で非常に高い威力を発揮します。最新世代のTruDiskレーザでは、設置面のコンパクト化と堅牢性の向上が極めて大きなメリットになっています。インテリジェントな内部構造を有し、センサーが改良された同レーザは、コンディションモニタリングなどの未来型のインダストリー4.0サービスに最適です。また、TruDiskでは効率が高まっているほか、高効率のパルス機能とインテリジェントなエネルギー管理システムが備わっているため、どの運転状態でも大幅な省エネが実現します。

微細材料加工:最高の生産性

TRUMPFの短パルス・超短パルスレーザは、工業生産での使用に完璧に適しており、品質、生産性および収益性のすべてにおいて理想的なマイクロ加工が可能となります。比類のないパルス・出力安定性は、パルス発生とパルス放出を分離することで実現します。特許取得済みのコントローラーが各パルスをひとつずつ監視し、出力とパルスエネルギーを必要なレベルに正確に維持します。TruMicro 5000シリーズのピコ秒レーザの魅力は、極めて短いパルス、最大500 μJのパルスエネルギー、そして最大平均出力150 Wの卓越したビーム品質です。これを使用すれば、識別できるほどの熱の影響を受けることなく、微細材料加工で最大限の生産性が実現可能になります。同レーザは、半導体素材、金属、誘電体、プラスチックおよびガラスの加工に最適です。

2023年12月13日現在