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聴覚インプラント向けフィリグリーレーザマーキング

Dietmar Köll氏が自身の仕事について語ると、その情熱がひしひしと伝わってきます。「当社の製品で、コミュニケーションや生活の質の支障となる聴覚障がいを克服し、利用する人々が生活の喜びを取り戻す手助けをしたいというのが私たちの想いです。素晴らしい仕事でしょう。」Köll氏は、オーストリアのインスブルックにあるMED-EL社で外部機器製造部門長を務めています。チロル州に本社を構える同社は、聴覚を回復させる埋め込み型ソリューションを扱う一大手企業です。「見えないと物事から距離を置き、聞こえないと人を避けるようになります」と、Köll氏は言います。同氏は、こうした状況を変えるために、もう24年間MED-EL社で働いてきました。

この家族経営企業は、人工内耳インプラントの開発・生産で、世界的に広く知られています。聴覚機器はマイク付きオーディオプロセッサとインプラントでできています。プロセッサは耳の後ろに装着し、 インプラントは手術により皮下に挿入されます。  フレキシブル電極アレイが、インプラントから聴覚感覚器の蝸牛へとつながります。音声処理装置からの音の情報を電気インパルスとして聴覚神経に伝え、聴覚神経がその情報を脳に伝えます。脳はこれを音として解釈するのです。生まれつき耳の聞こえない人でも、聴覚学習にこれを使用できます。「製品を使ってくれる方が再びあるいは初めて音を耳にしたときに感じる喜びを目の当たりにすることは、私の日々の仕事の活力になります」と、Köll氏は語ります。

MED-EL Elektromedizinische Geräte GmbH

www.medel.com

1975年、Ingeborg Hochmair氏とErwin Hochmair氏夫妻がウィーン工科大学で最初の人工内耳の開発に着手し、後のMED-EL社の基礎を築きました。そして夫妻がインスブルックの工場で最初の従業員を雇用したのは1990年のことでした。Ingeborg Hochmair氏が経営をする同社は現在、80か国と多国籍に富んだ2,500名の従業員が、140か国・30支店で働いています。MED-EL社は、多種多様な埋め込み型および非埋め込み型の聴覚機器を取り揃えています。イノベーションを推進する同社にとって、研究開発は常に重要な活動です。同社は常にユーザー一人一人に目を向けて、聴こえる喜びを通じた生活の質向上のサポートを目標としています。同社顧客には、診療所や医師だけでなく、患者に聴覚ケアを提供するオーディオロジストも含まれます。

業界
医療技術
従業員数
2,500
事業拠点
オーストリア・インスブルック(Innsbruck)
TRUMPF製品
  • TruMark Station 5000
  • TruMark 3130
アプリケーション
  • レーザマーキング
  • レーザ切断

課題

人は皆、お互いに異なり、同様に耳にも一様ではありません。聴覚インプラントは一人一人に合わせて作らなければなりません。Dietmar Köll氏は次のように語ります。「私たちは変化に対応し、お客様の声を製品に反映させようとしています。だからこそ、私たちはモジュール構造を持つ非常に幅広い製品ラインアップを展開しているのです。このようにして、私たちは多種多様な聴力状況にそれぞれ合う最適なソリューションを見つけることができるのです。」

そしてもう一つの課題、それは部品の小ささです。また、製品や製造プロセスのトレーサビリティと文書化に対する要求も高まっています。そのため、多くのマーキングを施し、それゆえにスペースが狭いという条件の中でマーキングは高い耐久性と判読性を満たす必要があります。  Köll氏は、「患者は私たちの製品を体内に、あるいは外でも身体に装着するわけですから、製品は可能な限り小型であること、特に耐久性と安定性を有している必要があります」と強調します。製造においては、これはつまり、少量生産と部品の個別仕様への対応です。そのためには、医療技術の高い基準を満たす柔軟なマシンが必要になります。

MED-EL社のもう一つ取り組んでいること、それは製品のデジタル化です。「スマートフォンのアプリでインプラントをコントロールできる、これは今日日普通のことです。競争力を維持するためには、このトレンドについていく必要があります」と、Köll氏は語ります。

私たちは積極的に様々なことをテストし、多くを試したいと考えており、レーザを使ったマーキングのほか、各種素材の切断試験も行っています。

Christoph Fankhauser
MED-EL社 外部機器製造副グループリーダー

ソリューション

マーキング作業に必要な柔軟性を提供する目的で、2004年以来、MED-EL社ではマーキングレーザがこれをサポートしています(導入当初のマシンはTRUMPFのVectormark VMC4)。以前は、外部のサービスプロバイダーが部品のマーキングを引き受けていました。長期的視点でこれを捉えると、時間も回転もよくありませんでした。MED-EL社で外装機器製造部門副グループリーダーを務めるChristoph Fankhauser氏はこれについて、「法的要件に対応するため、私たちは何度もマーキングを修正しなくてはなりません」と説明しています。また、材料の品質に変動があった場合でも読みやすいマーキングを施すため、レーザで迅速な対応が求められます。「この点をまずサプライヤに説明しなければならないのでは、大きな時間のロスになってしまいます。」このようなわけで、部品のレーザマーキングは非常に重要なのです。最初に導入したTruMark Station 5000により、同社はマーキングの重要性と高品質を考慮し、2010年にこの中心的な製造工程用にまた新たなシステムを工場に導入することにしました。「当社では、主に金属部品やプラスチック部品にシリアル番号や機械読み取りUDIコードをマーキングしています。さらに、矢印や注記など、ユーザーによる取り扱いを容易にするシンボルもあります」とFankhauser氏は言います。

MED-EL社では、完成品に表示されるマーキングが多いことから、フォントのグラデーションを統一を重要視しています。これには、読みやすさを確保するために高いコントラストが必要になります。「もちろん、マーキングを再現できることが絶対条件です」と、Fankhauser氏は強調します。「TruMarkレーザなら、非常に小さな部品であっても、この要件を満たすことができるのです。」

 

実行

MED-EL社は製造エリアにTruMark Station 5000を現在合計3台設置しており、このマシンで、インプラント部品のほか、外部システムコンポーネントやアクセサリ部品にもマーキングを施しています。すべてのマーキングステーションは、TruMark シリーズ 3000のレーザと組み合わせて作業が可能です。「当初はグリーンレーザを使用していましたが、今は、より柔軟性に優れた波長1064ナノメートルの赤外線を使用しています」と、Fankhauser氏は語ります。

MED-EL社はマーキングレーザを使用して、プラスチック部品のほか、インプラントの金属ハウジングにもマーキングを施しています。中にはチタン製のほか、一部にはプラチナ・インジウム製の部品もあります。ですが一番の課題はプラスチック部品のマーキングです。「当社では1,000種類を超える多種多様な製品品目を取り扱っており、これらに個別の製品コードとシリアルナンバーを付けています」と、Fankhauser氏は説明します。サプライヤから大量に各種部品を購入するので、ロットごとに、材料品質に変動が生じることもあります。これに対応するため、製造チームはレーザパラメーターを何度も調整しなければなりません。「一方で、部品にスペース的余裕がないという問題もあり、そのうえで読み取れるマーキングを施さなければなければならないのです。なかなか容易なことではありません。」しかし、積み重ねてきた専門知識と精密なTruMarkマーキングレーザをツールとして組み合わせることで、チームはこのハードルさえも克服しています。

MED-EL社は連続生産でTruMarkレーザをブランク材のデパネリングにも活用しています。「私たちは積極的に様々なことをテストし、多くを試したいと考えています」と、Fankhauser氏は言います。「レーザを使ってプロトタイプのマーキングや、開発部と連携して各種素材の切断やマーキングのテストも行っています。」同氏の同僚であるDietmar Köll氏は、この精神こそが、MED-EL社を形作っているのだと考えます。「何年経っても、この構造が色あせることはありません。私たちは常に新しい開発に取り組み、だからこそ物事を動かし変えていくことができるのです。」

Photocredits: © Daniel Zangerl / MED-EL

展望

MED-EL社のインプラント製造では、将来的にはTruMark 6030が部品のマーキングを引き継ぐことになると考えられます。「このレーザは統合的にレーザ性能を調整する機能を提供しています。当社は医療製品メーカーという立場から、この機能に非常に感激しています」と、Dietmar Köll氏は語ります。出力が常に自動調整され、安定した状態で保たれます。つまり、これでレーザ間にばらつきが生じません。「また、この機能でレーザの出力安定性を文書化して、プロトコルと文書化の法的要件を満たすことができるのです」と、Köll氏は強調します。また、TRUMPFは、IQ/OQ認証にも対応しており、法的要件の遵守を促進しています。Köll氏には、また次の設備投資でもTRUMPFのレーザが選ばれることは明白です。「私たちの生産にとって、マシンの信頼性が高いことは非常に重要です。そして、何か新しいことをテストするとき、あるいは設備に技術的質問や問題があるときに私たちをサポートしてくれるパートナーが必要です。TRUMPFなら、フルパッケージとしてこれらが一揃いで提供されるんです。」

当社製品に関する詳細情報

TruMark Station 5000
TruMark Station 5000

コンパクトでフレキシブルなマーキングシステムをお探しの方には、TruMark Stationが最適なオールラウンダーマシンであることとお分かりいただけるはずです。このマシンは、立位または座位で使用でき、フローラインに組み込み、回転軸や画像処理ソフトウェアなどのオプションを追加することができます。

TruMark 3000シリーズ、材料とアプリケーションのオールラウンダー
TruMark 3330

TruMark 3330マーキングレーザは、様々な素材の加工に最適なマシンです。このレーザは紫外線を放出し、これにより、ポリマーや、銅・アルミニウムといった金属を確実に加工できます。非常に優れたビーム品質と、高いパルス・ツー・パルスの安定性により、最適なマーキング結果が得ることができます。

TruMark 6030と供給装置
TruMark 6030

TruMark 6030マーキングレーザは、多機能の赤外線照射ツールです。添加物を含む多岐にわたる金属やプラスチック素材の加工に適しています。添加物は、赤外線レーザ光線の吸収をよくする働きがあります。このマーキングレーザシステムは、常に再現性の高いマーキング品質と、自由形状の3D形状を持つ部品へのマーキング能力を提供します。

発行:2023年9月26日